税制優遇措置について
高額な医療用機器の設備投資については、税負担を軽減するための制度が設けられています。
①高額な医療用機器の特別償却
青色申告書を提出している法人または個人事業主が、取得価額500万円以上の医療用機器を取得した場合、取得価額の 12%を特別償却として計上できる制度があります。
この制度を利用すると、通常の減価償却(普通償却)に加えて特別償却を行うことができ、取得した年度の償却額を増やすことが可能となります。
★特別償却のよくある勘違い
「特別償却を使うと、たくさん経費にできておトク」と思われがちですが、実は少し誤解されやすい制度です。特別償却は、設備を購入した初年度に限り、通常の減価償却よりも多くの減価償却費を計上できます。ポイントは計上のタイミングで、減価償却期間全体で見ると、トータルの償却額(経費の合計額)は普通償却と変わりません。
あくまで、初年度に経費を多く計上できるという点が特別償却の特徴です。
「税負担そのものを恒久的に軽減する制度」ではなく、減価償却費の計上時期を前倒しすることにより、課税所得の認識時期を調整する制度と捉えるのが適切です。その結果として、初年度の課税所得が圧縮され、法人税等の支払時期が繰り延べられるため、短期的にはキャッシュ・フローの改善効果が生じます。
なお、本制度は令和7年度税制改正により、令和9年3月31日までの2年間延長されています。
②医師及び医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の特別償却
医療機関が「医師等勤務時間短縮計画」に基づき取得した医療用機器やソフトウェアのうち取得価額30万円以上のものについては、取得価額の15%を特別償却できる制度です。
これらの制度は経営状況によって税制上の効果が異なりますが、、医療機器等の購入により経営負担が大きくなりやすい導入初年度に税負担が軽減されることで、経営の安定化に繋がります。
(例)
・レセプトコンピュータ(いわゆる、レセコン)
・電子カルテシステム
・オンライン予約問診システム など
また、このほかにも「中小企業投資促進税制」や「中小企業経営強化税制」など一定の要件を満たすことで活用できる税制優遇措置があります。
これらの制度は、税額控除にあたります。利益が出ている医院・クリニックにおいて有効な制度となります。そもそも適用できるかどうか、またどの制度を選択するかによって税務上の効果が大きく異なるため、設備投資の内容や取得時期、資金繰りへの影響や収益状況を踏まえた検討が重要です。
リースを利用した設備投資のメリット・デメリット
医療機器の導入にあたっては、購入だけでなくリースを活用する方法もあります。
導入目的や資金状況、将来の設備更新計画を踏まえ、どちらが適しているかを検討することが重要です。
【メリット】
・多額の初期投資が不要なため、資金繰りへの影響を抑えられます。
・リース料は原則として全額が損金となり、毎月の経費計上額が一定になります。
・減価償却のように耐用年数や償却計算を要することなく、毎月のリース料を支払額ベースで経費計上できるため、月次損益の把握や管理がしやすいという実務上のメリットがあります。
・短期間での技術革新が想定される機器については、更新や入れ替えを前提とした導入がしやすい点もメリットです。
【デメリット】
・金利相当額が含まれるため、総支払額は購入した場合より高くなることが一般的です。
・原則として途中解約ができず、柔軟性に欠ける点には注意が必要です。(ご契約内容をご確認ください。)
・特別償却や税額控除など、一部の税制優遇措置が適用できない場合があります。
リース契約は支出を平準化できる一方で、税制面の選択肢が限定されるため、節税効果を重視するのか、資金繰りの安定を優先するのかによって向き・不向きが分かれます。
そのため、設備投資を検討する上では、購入・リースそれぞれの税務・資金面への影響を比較したうえで判断することが大切です。
設備投資は、医療機関の将来に影響する大切な判断です。
医療機器や医療設備等の導入には高額な費用が発生しますが、補助金や助成金を活用することで費用を抑えることが出来ます。
また、医療設備等の導入を検討する段階で、医療機器メーカーや専門家に対し、特別償却などの税制優遇措置が適用されるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。事前に確認することで、導入後の資金計画や税務処理をよりスムーズに進めることができます。
制度を正しく理解し、無理のない設備投資につなげていきましょう。
設備投資は、事業を継続・発展させていくうえで欠かせないテーマのひとつです。特に医療分野では、専門性の高い設備や高額な医療機器を導入するケースも多く、その判断が将来の経営に与える影響は小さくありません。
今回は、設備投資をする前に確認したいポイントについてご紹介します。