会計・税務

ふるさと納税の返礼品が課税対象に
~今後のふるさと納税利用時の留意点~

2025.09.04

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多くの皆様が活用されている「ふるさと納税」。この返礼品をめぐり寄付者が税務署を提訴しました。税務署は返礼品が「経済的利益」であり、一時所得として課税対象になると通知し、寄付者はこの返礼品課税を不服としたためです。
本件は、先日最高裁判所の判決が確定し、この判決は、今後のふるさと納税の利用において重要な留意点となりますのでご案内いたします。

ふるさと納税の返礼品の位置づけ

ふるさと納税は、応援したい地方自治体に寄附をすることで、寄附金のうち2,000円を超える部分について所得税や住民税の控除が受けられる制度です。返礼品は、この寄附の「対価」ではなく、あくまで自治体からの「謝礼」として交付されるものとされています。

返礼品の価値をめぐり寄付者が税務署を提訴した裁判は【ふるさと納税の返礼品は、原則「一時所得」の対象である】とされ、寄付者の訴えが退けられました。

この最高裁判所の判決により、ふるさと納税の謝礼として得られる経済的利益が、一時所得として課税対象となることが明確になりました。

今後のふるさと納税利用時の留意点

1.返礼品に係る一時所得の計算方法と「50万円の特別控除」

返礼品に係る一時所得の金額は、以下の計算式で算出されます。

▼算出方法
一時所得の金額 = (一時所得の総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額50万円) × 1/2

 

ここで重要なのは、一時所得には最高50万円の「特別控除」があるという点です。この控除があるため、返礼品の経済的利益の合計額が年間50万円を超えなければ、課税対象にはなりません。
なお、ふるさと納税の寄附金自体は、返礼品を得るための「支出」とはみなされません。

2.課税の影響

上記にご説明した判決により、「ふるさと納税の返礼品は全て課税される」と誤解されている方もいらっしゃるかもしれませんが、上記のとおり年間50万円の特別控除があるため、ほとんどの方には影響がないと考えられます。
ただし、生命保険の満期金や解約返戻金など、返礼品以外にも一時所得がある場合には、他の一時所得と合算して50万円を超える場合に課税されますので注意が必要です。

3.ふるさと納税利用時にすべきこと

受け取った返礼品の「経済的利益の価額」については、原則として自治体が調達事業者に支払った「調達価格(事業者調達価格)」が時価とみなされます。さらに裁判所は「納税者にはこの調達価格を把握した上で申告する義務がある」と判断しました。
つまり、ふるさと納税の利用者が課税対象となる返礼品の価値を把握する必要があるということになります。

返礼品の調達価格を把握するためには、以下の方法が考えられます。
▼把握方法
•寄附先の自治体へ直接問い合わせる。
•寄附金額の「3割」で概算する。
自治体は返礼割合を3割以下とするよう求められているため目安として利用できますが、正確性には欠ける可能性がありますので注意しましょう。また、問い合わせの記録や寄附金受領証明書、返礼品の明細書などを保管し、確定申告時や税務調査時に提示できるよう整理しておくことが重要です。

まとめ

今回の判決は、ふるさと納税が単なる「お得な買い物」ではなく、その経済的価値が課税の対象となる「所得」であるという認識を再確認させるものでした。これからは寄付前に返礼品の内容等十分に確認し、適正な時価の把握と記録を行うことが重要になっていきます。また10月からは、寄付者に対するポイント等の付与制度が禁止される見込みです。今後もふるさと納税制度の動向に注視していきましょう。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。